王水(おうすい)は、金や白金などの貴金属を溶かす強力な酸です。濃硝酸と濃塩酸を混ぜた酸で、通常の酸とは違う強い反応性を持つ点が特徴です。ただし、混ぜた直後から性質が変わり、有害なガスが発生するおそれもあります。取り扱いを誤ると重大な事故につながるため、一般の場で扱うものではありません。
本記事では、王水とは何か、何が溶けるのか、危険性、金が溶ける理由、pHの考え方、歴史的なエピソードまでを、化学知識としてやさしく解説します。

王水は強い腐食性があり危険です。ここでは知識として理解するための解説にとどめます
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王水とは?
王水は、濃い硝酸と濃い塩酸を混ぜて作る混合酸です。「金属の王」である金を溶かすことから「王水」と呼ばれ、英語では aqua regia(アクア・レギア)と呼びます。王水は、強い酸性に加えて金属を変化させやすい性質も持つため、金や白金の精製、貴金属リサイクル、分析の前処理などに使われます。
- 王水とは濃硝酸と濃塩酸を混ぜたもの
- 金や白金など通常の酸では解けない金属を溶かす
- 「金属の王」である金を溶かすことから命名
- 英語名は Aqua regia(アクア・レギア)
金や白金の精製、貴金属リサイクル、試料を分解する分析化学などで利用されています。王水は強い酸化作用を併せ持つため、通常の酸では溶けない金属の処理や化学分析に欠かせない存在となっています。
王水の作り方は?
王水は、濃硝酸と濃塩酸を混ぜた酸です。混ぜた直後から反応が進み、時間とともに性質が変わっていきます。そのため、作り置きして使うようなものではなく、必要な場面に限って、専門的な管理のもとで扱われます。
また、混ぜると刺激の強いガスが発生するおそれがあり、腐食性も非常に強い薬品です。取り扱いには設備や安全管理が欠かせないため、一般の場所での調製や使用は行うべきではありません。王水は「どう混ぜるか」よりも、混ぜた直後から危険性が高まり、性質が変化し続ける点を理解することが重要です。
- 混合比は濃塩酸3:濃硝酸1で混合
- 強い腐食性あり、保護具が必須
- 有毒ガスが発生するため排気設備が必要

学校のテスト対策として、王水の作り方を“1しょう3えん”と覚えていました。
王水で溶けるもの/溶けないもの
王水は、通常の酸では溶けない金や白金を溶かすことができる点が大きな特徴です。一方で、すべての物質を溶かすわけではなく、溶けないものもあります。
| 溶けるもの | 溶けないもの |
| 金、白金、その他多くの金属 | 銀、タンタル、イリジウム、ガラスなど |
銀の場合は王水に入れると表面に塩化銀の膜が形成され、それ以上反応が進まないため溶けません。タンタルやイリジウムといった金属は耐酸性が非常に高く、王水にも侵されません。またガラスはシリカを主成分とし、金属でないため溶けません。
王水の使い道
王水は、強力な酸化作用を持つため、通常の酸では不可能な処理に利用されています。特に金や白金といった貴金属に対しては欠かせない存在です。
- 金や白金の精製に利用される
- 都市鉱山からの貴金属リサイクルに活用される
- 分析化学で試料を分解する前処理液として用いられる
精製では、金を王水に溶かしてから再び析出させることで高純度の金属が得られます。リサイクル分野では、廃電子機器(いわゆる都市鉱山)から金や白金を回収する際に王水が使われています。
また、分析化学では試料を完全に分解する「酸分解」の工程に利用され、微量の金属元素まで正確に測定するために役立っています。
このように王水は、貴金属産業から研究分野に至るまで幅広く利用される重要な化学薬品です。
王水の危険性
王水のリスクは「強い酸性」だけではありません。混合により反応性の高い成分が生じることで、腐食性が大きく、取り扱いを誤ると短時間で重大な被害につながるおそれがあります。さらに、混合直後から有毒なガスが発生し得る点も重要です。
王水が人体に与える影響
王水は皮膚や粘膜に触れると思い化学熱傷につながり大変危険です。また発生したガスを吸入すると健康被害につながるおそれがあります。取り扱いは、適切な保護具の装着と十分な換気の上、専門的な安全管理のもとで実施しなければなりません。
王水による事故
事故の多くは、想定以上に反応が進んだり、発生ガスが十分に排気されなかったりすることで起こると考えられます。
また、誤って王水を下水に流出させてしまうと、排水設備の損傷や自然環境に重大な影響を与えるおそれもあるため、廃棄時は適切に処分する必要があります。
王水の化学式と反応式
王水そのものは混合物であり、単一の化学式は存在しません。濃硝酸(HNO₃)と濃塩酸(HCl)を混ぜ合わせることで反応が起こり、塩素(Cl₂)や塩化ニトロシル(NOCl)といった反応性の高い物質が生成されます。これらが王水の強力な作用の源です。
王水に金(Au)を入れると、金が塩化金酸イオン(HAuCl₄)となって溶解します。
- 化学反応式:HNO₃+3HCl → NOCl+Cl₂+2H₂O
- 金が溶ける反応式:Au+HNO₃+4HCl → HAuCl₄+NO+2H₂O
詳しく解説すると、硝酸によって塩素と塩化ニトロシルという酸化力の高いガスが生成されます。このガスと塩酸によって金が酸化され、さらに塩酸から生じた塩素イオンによって安定な錯イオン(HAuCl₄)を形成します。
王水の歴史
王水は、古くは錬金術の時代から知られていました。金をも溶かすことができる酸として、錬金術師たちに大きな関心を持たれ、やがて「王の金属を溶かす酸」という意味から「王水」と呼ばれるようになりました。
近代に入ると、化学の発展とともにその性質が体系的に研究されました。王水は化学史において特別な位置を占め、貴金属の扱いにおける重要な化学薬品として位置付けられています。
第二次世界大戦中には、コペンハーゲン大学の研究者ジョージ・ド・ヘヴェシーが、ナチスに押収されるのを防ぐためにノーベル賞メダルを王水に溶かして隠した逸話が残されています。このメダルは戦後に再精製され、持ち主に返還されました。
- 錬金術の時代から知られていた
- 金属の性質を探る中で発見されたとされる
- 「王水」という名称は金を溶かす力に由来
王水は単なる強酸としてだけでなく、歴史や文化にも深く結びついてきた存在といえるでしょう。
王水のpH(0より小さい?)
王水のような高濃度の酸は、一般的なpH測定器では扱えず、正確な値を示すことは難しいです。理論的にはpHは0よりも小さいと考えられます。例えば、濃塩酸だけでも、濃度は35~37%であり、pH0を下回ります。詳しくは、専門書をご参照ください。
※pHの一般的な話についてはこちらの記事を参考にしてください
よくある質問(FAQ)
Q1. 王水は家庭で作れますか?
A. 作れません。王水は濃硝酸と濃塩酸を混合して得られますが、有毒ガスを発生させる非常に危険な化学物質であり、専門の設備と知識が必要です。
Q2. 王水の英語名は何ですか?
A. 英語では aqua regia(アクア・レギア) と呼ばれます。直訳すると「王の水」という意味です。
Q3. 王水で金は溶けますか?
A. 溶けます。硝酸が金を酸化し、塩酸に含まれる塩素イオンが結合して塩化金酸(HAuCl₄)となり、溶液中に安定します。
Q4. 王水を飲むとどうなりますか?
A. 王水は強酸性かつ有毒で、人体にきわめて危険です。少量でも生命に関わるため、決して触れたり飲んだりしてはいけません。
まとめ
- 王水とは? 濃硝酸と濃塩酸を混ぜた混合酸で、金属の王を溶かす酸として命名
- 作り方 濃塩酸3:濃硝酸1で調製、強い腐食性と有毒ガスに注意
- 化学式と反応式 単一の式はなく、混合でCl₂やNOClが発生し金を溶かす
- 溶ける/溶けないもの 金や白金は溶けるが、銀・ガラス・イリジウムは溶けない
- 危険性と事故例 強酸性と揮発性ガスにより重大事故の危険
- 使い道 金属精製、都市鉱山のリサイクル、分析化学での試料分解に利用
- 歴史 錬金術に由来し、ラテン語でaqua regia
- pH 0より小さい超強酸性。濃硝酸や濃塩酸も同様に強酸性を示す
王水は金や白金も溶かす強力な酸ですが、溶けないものもあります。錬金術の時代から存在し、歴史や文化とも結びついた特別な化学物質です。正しく理解し、その危険性を踏まえて化学知識として活用してください。
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