
「産業廃棄物を処分する際に、『マニフェスト』が要らないケースって、どんな場合なの?」

今回はこんな疑問にお答えします
産業廃棄物の処理において、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付が原則として義務付けられています。しかし、一定の条件を満たす場合には、マニフェストの交付が不要となるケースも存在します。本記事では、マニフェストが不要となる具体的なケースについて、根拠条文付きでやさしく解説します
マニフェストが不要となるケース(施行規則第8条の19)
マニフェストの交付が不要となるケースは、廃棄物処理法施行規則第8条の19に規定されていますので、ご確認ください。
廃棄物処理法施行規則
第八条の十九 法第十二条の三第一項(法第十五条の四の七第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の環境省令で定める場合は、次のとおりとする。
一 市町村又は都道府県(法第十一条第二項又は第三項の規定により産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分をその事務として行う場合に限る。)に産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
二 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)第二十条第二項の規定により国土交通大臣に届け出て廃油処理事業を行う港湾管理者又は漁港管理者(廃油(同法第三条第十三号に規定する廃油をいう。以下この号及び第十一号において同じ。)の収集若しくは運搬又は処分を行う場合に限る。)に廃油の運搬又は処分を委託する場合
三 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分を業として行う者に当該産業廃棄物のみの運搬又は処分を委託する場合
四 法第十五条の四の二第一項の認定を受けた者(資源として利用することが可能な金属に係る当該認定を受けた者を除く。)に当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を委託する場合
五 法第十五条の四の三第一項の認定を受けた者(その委託を受けて当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を業として行う者(同条第二項第二号に規定する者である者に限る。)を含む。)に当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を委託する場合
六 第九条第二号の指定を受けた者に当該指定に係る産業廃棄物のみの運搬を委託する場合
七 第十条の三第二号の指定を受けた者に当該指定に係る産業廃棄物のみの処分を委託する場合
八 国(産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分をその業務として行う場合に限る。)に産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
九 運搬用パイプライン及びこれに直結する処理施設を用いて産業廃棄物の運搬及び処分を行う者に当該産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
十 産業廃棄物の輸出に係る運搬を行う者に本邦から輸出の相手国までの産業廃棄物の運搬を委託する場合
十一 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律第二十条第一項の規定により国土交通大臣の許可を受けて廃油処理事業を行う者(廃油の収集若しくは運搬又は処分を行う場合に限る。)に同法第九条第三項に規定する外国船舶(専ら本邦の各港間又は港のみを航行するものを除く。)において生じた廃油の運搬又は処分を委託する場合出典: 廃棄物処理法施行規則 第8条の19(e-Gov) 2025.4.20現在

以下のとおり、マニフェストが不要なケースは限定的です。そもそも処理業の許可が不要である場合など、不適正処理が行われにくいものが多い印象です。
【第1・8号】市町村・都道府県・国への委託
産業廃棄物の運搬または処分を市町村や都道府県、国に委託する場合
【第2号】港湾管理者・漁港管理者への廃油処理の委託
海洋汚染防止法に基づき届け出をした港湾管理者・漁港管理者に廃油の運搬・処分を委託する場合。
【第3号】専ら再生利用業者への委託
再生利用目的のみで産業廃棄物を扱う業者に、専ら再生利用対象物(古紙、くず鉄、あきびん類、古繊維等)のみを委託する場合。
(参考)専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて(通知)
【第4号】再生利用認定業者への委託
環境省が認定した再生利用認定業者(法第15条の4の2)に、産業廃棄物の処理を委託する場合。ただし例外もあります。
【第5号】広域的処理認定制度への委託
環境省が認定した広域的処理業者(法第15条の4の3)に、産業廃棄物の処理を委託する場合。パソコンや消火器などがあります。こちらも例外があります。
(参考)広域認定制度関連(環境省)
【第6・7号】指定運搬業者・指定処分業者への委託
環境大臣の指定を受けた処理業者(法第9条、法第10条の3)へ、産業廃棄物の処理を委託する場合。これらの処理業者はそもそも許可を要しない者と定められている特殊なケースです。
【第9号】パイプラインによる運搬・直結施設への処理
パイプラインおよび直結処理施設を使用する業者に委託する場合。
【第10号】産業廃棄物の輸出に係る運搬
輸出に伴い、日本から相手国までの運搬を業として行う者に委託する場合。
【第11号】外国船舶由来廃油の処理
外国船舶で発生した廃油を、海洋汚染防止法に基づき許可を受けた事業者に処理委託する場合。
そもそもマニフェストが必要なケース
マニフェストの交付に関しては、廃棄物処理法の第12条の3第に規定されています。「産業廃棄物の収集、運搬、処分を他人に委託する場合は、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければならない」とされており、違反時は罰則もあるので、確実な運用が必要です。
マニフェストの流れや書き方ついてはこちらの記事をご覧ください。
注意したいポイント
・マニフェストが不要でも委託契約は必須です。
・法律の条文の解釈は難しいので、疑問があれば自治体に相談してください。

マニフェストの制度をきちんと理解し、正しい運用を行ってください。廃棄物の実務について、さらに理解を深めたい方に役立つ書籍をご紹介します。
■『いちからわかる 廃棄物処理法』(鷺坂長美 著)
■『これは廃棄物?だれが事業者?』(龍野浩一 著)
※本記事は、信頼性を保つため、環境省や自治体の一次情報を基本としていますが、法の解釈は自治体の判断により分かれることがありますので、実際の運用についてはお住いの自治体に必ずご相談ください。