【元技術公務員が解説】産業廃棄物とは?簡単にわかりやすく解説!

廃棄物処理法

「そもそも「産業廃棄物」って何?」

TAROさん
TAROさん

今回はこんな疑問にお答えします

例えば、こんな方におすすめです
・産業廃棄物が何かできるだけ簡単に知りたい方
・企業やお店で出るごみをどのように処分したらいいかわからない方
・法律や自治体のサイトを見てもよくわからない方
・企業で、新しく廃棄物の担当者になった方
・廃棄物処理法について知りたい方  など

TAROさん
TAROさん

ちなみに筆者の私ですが、こんなキャリアがあります。

・廃棄物処理に関する許認可の審査担当(元公務員技術職)
・廃棄物処理施設技術管理者の有資格者

さらに本記事は、信頼性を保つため、環境省や自治体の一次情報を基本としています。

この記事を読み終わった後は、産業廃棄物が何かわかるようになっていると思います。
※なお、実際の法的な解釈は自治体の判断により分かれることがありますので、お住いの自治体にご相談ください。

産業廃棄物の概要

法律で定義

産業廃棄物とは、いわゆる「産廃(さんぱい)」とよばれるもので、「廃棄物処理法」という法律の中で定められている用語です。

法律を見てみましょう。

廃棄物処理法 第2条[抜粋]

4 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物

廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | e-Gov法令検索

つまり、産業廃棄物とは「事業活動に伴って発生」かつ「燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定めたもの」です。

この2つの要件にあてはまるゴミが産業廃棄物となります。

事業活動で出たゴミ

それでは「事業活動で出たゴミ」とはなんでしょうか?簡単に言えば、一般の家庭からでるゴミ以外はすべてです。

会社やお店、工場、病院などから出るゴミはもちろん、農業などから出るゴミも含まれます。

さらに、事業活動とは営利を伴うものに限定されていないので、学校や官公庁、さらには自治会活動によって発生するゴミもすべてあてはまります。

※地震など災害によって発生したゴミは通常一般廃棄物に該当します。

※「事業活動」は法で定義されておらず、自治体によって見解がわかれることもあるため、疑義が生じた場合は自治体に確認してください。

「政令で定めたもの」とは?

事業活動で出たゴミの中で、以下のゴミが産業廃棄物になります。

・燃え殻
・汚泥
・廃油
・廃酸
・廃アルカリ
・廃プラスチック類
・政令で定めたもの

ここでいう政令とは、廃棄物処理法施行令のことであり、廃棄物処理法をさらに細かく規定したものです。

つまり、事業活動にともなって生じたゴミでも、上記以外のごみは産業廃棄物には該当しません(「一般廃棄物」に該当)。

それでは政令で定められているものを含め、具体的などんなゴミが産業廃棄物か解説します。

産業廃棄物の種類

全20種類!業種によって異なる

産業廃棄物は全部で20種類あります。

そのうちの一部は「業種や事業活動が指定」されています。つまり、業種などが該当しなければ産業廃棄物にはなりません。

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※廃棄物処理法施行令第2条参照

※「政令で定めたもの」とは、つまり、上記の表で業種や事業活動が指定されたものです。

いかがでしょうか?自分の会社やお店などから出るゴミが、産業廃棄物に該当するかわかりますか?

簡単な例をあげますと・・・

「廃プラスチック類、金属くず、ガラスくず」などは、業種によらず「産業廃棄物」になります。

一方、「紙くず」「木くず」などは、特定の業種の場合のみ「産業廃棄物」になり、それ以外の業種では「一般廃棄物」になります。

ただ、ちょっと注意点があります。輸送などに使用する「木製のパレット」については、業種によらず「木くず」に該当します。

つまり、スーパーやデパートなど建設業以外の業種でも、産業廃棄物の「木くず」として処分しなければなりません。

これ以外にも「どの廃棄物に該当するか?」判断が難しいゴミも存在し、自治体によって判断が異なるケースもあるため、注意が必要です。

特別管理産業廃棄物とは?

上記の産業廃棄物の中で、特に危険で危ないものについては、「特別管理産業廃棄物」(いわゆる「特管(とっかん)」)と呼ばれる産業廃棄物として、法律で別途定義されています。

(廃棄物処理法)第2条[抜粋]

5 この法律において「特別管理産業廃棄物」とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | e-Gov法令検索

f:id:TAROMARU:20211016014352p:plain

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 | e-Gov法令検索

※廃棄物処理法施行令第2条の4参照

もしこれらの廃棄物を取り扱う場合は、法律により、一定の資格を持つ「特別管理産業廃棄物管理責任者」を選任する義務があります。なお、選任に当たり届出義務の有無は自治体によって異なります

www.env.go.jp

産業廃棄物以外はすべて一般廃棄物

上記の産業廃棄物(特別産業廃棄物)に該当しないゴミは、すべて一般廃棄物に該当します。これは法律で定義されています。

つまり、会社やお店などから出るゴミでも一般廃棄物に該当するゴミはあります。ただ、通常、家庭ごみとは違い、近所のゴミステーションには廃棄できないので要注意です。

基本的に、一般廃棄物の処理は市町村に責任があるため、処分したい場合は、市町村の清掃工場か、市町村から許可を得た一般廃棄物処理業者(産業廃棄物処理業者とは別です)に委託してください。

産業廃棄物の処理方法

どんなゴミが産業廃棄物に該当するかわかったところで、「どうやって処分すればいいか?」について解説します。

そもそも産業廃棄物の処理の責任は、ゴミを出した事業者(排出事業者)になります。

ですので「廃棄物の処理業者にお願いしたら終わり!」というわけではなく、最後までちゃんと処分されるまでは、排出事業者の責任が重く付きまといますので、要注意です。

また、SDGsなどが叫ばれる昨今、ただ法律に則って処分するだけでなく、廃棄物の減量や有効利用など「適正処理」に努めていただければと思います。

処理の大まかな流れは次のとおりです。

1.産業廃棄物の処理方法の検討
2.産業廃棄物の分別・保管
3.産業廃棄物の収集・運搬
4.産業廃棄物の中間処理・最終処分

廃棄物の処理方法の検討

①廃棄物の種類は何か?

廃棄物が発生したら、一般廃棄物か?産業廃棄物か?、その種類は何か?量や性状はどうかなど判断します。その上で、自ら処分できる場合を除き、通常は廃棄物処理業者に委託して処分します。

②産業廃棄物処理業者の選定

産業廃棄物処理業者に委託する場合、法律でさまざまな義務があるため要注意です。

まず委託しようとしている廃棄物処理業者が、都道府県や市町村の許可を得ていなければなりません。

許可は、都道府県ごと、または市町村ごとに交付しています(産廃の場合は、都道府県か、権限移譲されている政令市のみです)。

許可と言っても様々あり、「一般廃棄物の収集運搬業」「産業廃棄物の収集運搬業」「一般廃棄物の処分業」「産業廃棄物の処分業」「特別産業廃棄物の収集運搬業」「特別産業廃棄物の処分業」それぞれ別なものです。

さらに、例えば「産業廃棄物の収集運搬業」や「産業廃棄物の処分業」の許可をもっていても、「廃プラスチック類」「金属くず」など、取り扱える種類が決まっていますので、処分したい廃棄物の種類の許可をもっていなければ処分できません。

また、そもそも許可を出している自治体と関係なかったら意味がありません(例えば、東京都内の会社から出る産業廃棄物を運ぶためには、少なくとも東京都の許可のある処理業者である必要があります)

なお、収集運搬業の許可は「積み込み場所」と「荷下ろし場所」の自治体の許可が必要です。

※産業廃棄物処理業者の選定についてはこちらをご参照ください

www2.sanpainet.or.jp

③産業廃棄物処理業者との委託契約

処理業者が決まったら「電話一本で、あとは任せた!」というわけにはいきません。法律で「委託基準」が定められており、違反すると重い罰則があるのです。

まずは処理業者と「書面で契約」する必要があります。また処理業者とは、主に2つあります。

・収集運搬業者

・処分業者(中間処理、最終処分)

上記の各業者とそれぞれ契約する必要があります。

つまり、収集運搬業者が中間処理業者と契約を結ぶわけではないので要注意です。

産業廃棄物の保管

廃棄物処理業者が取りに来るまで、社内で適切に保管する必要があります。法律で保管基準が定められており、きちんと分別し、周囲に飛散しないよう、悪臭などしないよう保管する必要があります。

(参考)

www.jwnet.or.jp

産業廃棄物の収集・運搬

収集運搬業者に、廃棄物を処分場まで運んでもらいます。
その際、処理業者に対してマニフェスト(産業廃棄物管理票)」を交付しなければなりません。
 
紙と電子の2種類あり、紙マニフェストの場合は、7枚複写式になっており、運搬終了時、中間処理終了時、最終処分終了時に、各処理業者から返送されますので、適切に処分されたかどうか確認してください。なお5年間の保管義務があります。
 
(参考)
 

産業廃棄物の中間処理・最終処分

廃棄物の処分場です。中間処理とは、最終処分に至るまで、破砕や脱水などすることです。最終処分とは、埋め立てになります。

なお、中間処理によって、リサイクルされれば埋め立て処分されずに済みますので、廃棄物の適正処理に努めましょう。

まとめ

産業廃棄物の種類や処理方法について解説しましたが、理解を深められたでしょうか?

これらはすべて「廃棄物処理法」という法律に定められているので、必ず確認してください。

ただ、この法律はなかなか難解です。私もはじめて実務を担当した時は、ひたすら法律の条文とにらめっこしていましたが、なかなか理解できませんでした。

企業の方は、より短時間で効率的に廃棄物処理法を理解したいと思うので、体系的にまとめられた関連本を読むのが一番です。

TAROさん
TAROさん

常備しておきたい、おススメの本を3冊ご紹介します。参考まで。

かゆいところに手が届く 廃棄物処理法 虎の巻 2017年改訂版 これは廃棄物?だれが事業者?お答えします! 廃棄物処理(改訂第3版) 廃棄物処理法令 (三段対照) ・ 通知集 令和4年版[廃棄物の処理及び清掃に関する法律](TAC出版)

なお、技術系の方など、「正しい法律の読み方がわからない」という方は、こちらの本を一読してください。環境法全般など規制がある法律を、どう読めばいいか理解できるはずです。

図解でわかる! 環境法・条例―基本のキ― 改訂2版
TAROさん
TAROさん

最後までご覧いただきありがとうございました。

【執筆者 プロフィール】
元技術系公務員のフリーライター。大手製造業で開発業務を経て、公務員の技術職へ。廃棄物処理法の担当者として、中間処理施設の許可事務を担い、多くの廃棄物処理業者への立入検査や許認可の審査などを行う。廃棄物処理施設技術管理者などの資格を保有。ほかにも水質汚濁防止法や土壌汚染防止法などの実務経験も。現在は、ライターに転向し、ビジネス系のWEBメディアや製造業者のWEBサイトなどの記事を執筆中。

「【記事執筆承ります】環境・リサイクルが専門の元化学系公務員ライター」

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