【はじめての水質汚濁防止法】うちの工場にも必要?公害防止管理者とは?

水質汚濁防止法
環境担当者
環境担当者

公害防止管理者って何?
うちの工場にも必要なの?
必要な場合何すればいいの?

TAROさん
TAROさん

今回はこんな疑問にやさしくお答えします

例えば、こんな方におすすめです
・自分の工場に公害防止管理者が必要か理解したい方
・法律や自治体のサイトを見てもよくわからない方
・企業で、新しく水質汚濁防止法の届出担当者になった方
・新しく特定事業場の経営者・工場長になる方

・公害防止管理者を受検する予定の方  など

TAROさん
TAROさん

ちなみに筆者の私ですが、こんなキャリアがあります。

・水質汚濁防止法の実務経験者(元公務員技術職)
・公害防止管理者(水質第1種)の有資格者

さらに本記事は、信頼性を保つため、環境省や自治体の一次情報を基本としています。

この記事を読み終わった後は、自分の工場に公害防止管理者が必要か、必要な場合どうすればいいかわかるようになっていると思います。
※なお、実際の法的な解釈は自治体の判断により分かれることがありますので、お住いの自治体にご相談ください。

※ そもそも「水質汚濁防止法ってなんだっけ??」という方は、こちらの記事がおすすめです。
 「水質汚濁防止法をわかりやすく解説!はじめて届出担当者になったら最初に確認すべき5点」

1 公害防止管理者とは?

工場の公害を防止するエキスパート!

公害防止管理者は、工場の公害を防止するために専門的な知識を有するエキスパートのことです。

例えば、工場排水をきちんと処理するのって、専門的な知識が必要ですよね。
そんな知識を持った人を、工場に整備することで、公害を防止しましょうというのが法律の趣旨です。

ちなみにこの公害防止管理者の根拠法令は、「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」になります。水濁法ではありません。

第1条 目的
 この法律は、公害防止統括者等の制度を設けることにより、特定工場における公害防止組織の整備を図り、もつて公害の防止に資することを目的とする。

e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346AC0000000107

※ 「特定工場」とは公害防止管理者が必要な工場のことです(詳細は後述します)。
※ 「公害防止統括者」とは公害防止管理者とは別に定義された者です(詳細は後述します)。

この法律の中で、公害防止管理者は以下のように定義されています。

第四条 公害防止管理者の選任【※水質に係る箇所のみ抜粋】
 特定事業者は、主務省令で定めるところにより、特定工場において次に掲げる業務を管理する者(以下「公害防止管理者」という。)を選任しなければならない。この場合において、第二条第一号又は第二号の特定工場にあつては、政令で定めるばい煙発生施設又は汚水等排出施設の区分ごとに、それぞれ公害防止管理者を選任しなければならない。

 第二条第二号の特定工場にあつては、前条第一項第二号に掲げる業務のうち、使用する原材料の検査、排出水又は特定地下浸透水の汚染状態の測定の実施その他の主務省令で定める技術的事項

e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346AC0000000107

※ 「特定事業者」とは特定工場を設置している者のことです。
※ 「主務省令」とは特定工場における公害防止組織の整備に関する法律施行規則のことです。

なお、公害防止管理者には、水質だけではなく、大気、騒音振動、ダイオキシン類、特定粉じん(石綿)、一般粉じんがあります。

役割は?

具体的な公害防止管理者の役割は、主務省令に「技術的事項」として規定されています。
水質に関しては以下のとおりです。

主務省令 第6条
 法第四条第一項第二号の主務省令で定める技術的事項は、次のとおりとする。
 使用する原材料の検査
 汚水等排出施設の点検
 汚水等排出施設から排出される汚水又は廃液を処理するための施設及びこれに附属する施設の操作、点検及び補修
 排出水又は特定地下浸透水の汚染状態の測定の実施及びその結果の記録
 測定機器の点検及び補修
 事故時の措置(応急の措置に係るものに限る。)の実施
 排出水に係る緊急時における排出水の量の減少その他の必要な措置の実施

e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346M50010d40003_20201228_502M60001f40002

国家試験に合格する必要あり

この公害防止管理者、実は誰でもなれるわけではないんです。

TAROさん
TAROさん

国家資格が必要です

国家資格を得るためには、「公害防止管理者試験」という国家試験に合格する必要があります。
過去に私も受験しましたが、試験内容が法律から技術的な内容まで幅広く、きちんと勉強しないと合格が難しいです。ただ、選択式で暗記系の内容が多く、過去問などしっかり対策すれば合格は可能なはずです。

※ なお、技術士などの有資格者や化学系などの学歴と実務経験者は、認定講習の受講により、
  国家試験に合格しなくても公害防止管理者の資格が得られます。

<参照>一般社団法人産業環境管理協会 ホームページ

水質関係は4種類ある

水質に関する特定工場の場合、公害防止管理者の資格を得るためには、水質関係の試験に合格しなければなりません(受講も可)。

水質関係の場合、第1種、2種、3種、4種があります。それぞれの違いの詳細は後述しますが、特定工場の内容によって、必要な種類が異なります。


例えば、第2種が必要な特定工場の場合、第3種の資格を持っていても公害防止管理者には選任できません。ちなみに第1種は他の種類すべてを網羅したものになり、当然、試験範囲も第1種が一番広くなります。

他にも公害防止〇〇者がある

特定工場には、公害防止管理者のほかにも必要な役職があります。

公害防止統括者

工場の公害防止に関する業務を統括・管理する役割を担う(工場長等)。資格は不要
なお、常時使用する従業員数が20人以下の場合は不要。

公害防止主任管理者

(大気汚染防止法における)ばい煙発生量が1時間当たり4万m3以上で、かつ(水濁法における)排出水量が1日当たり平均1万m3以上である一定規模以上の特定工場の場合に必要。「公害防止主任管理者」の国家資格が必要

代理者

公害防止統括者、公害防止主任管理者、公害防止管理者が旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行なうことができない場合にその職務を行なう者として、それぞれの代理者を決めておかなければなりません。代理なので同じ資格が必要です。

2 どんな場合に必要か?

特定工場に該当すれば必要

公害防止管理者の役割や国家資格が必要なことが分かったところで、どんな場合に公害防止管理者が必要なのでしょうか?

それは前述のとおり、あなたの工場が「特定工場」に該当する場合です。特定工場に該当すれば、その内容に応じた公害防止管理者の整備が義務付けられます。

では特定工場とはどんな工場でしょう?まずは法律の条文を見てみましょう。

第二条 定義 【※水質に係る箇所のみ抜粋】
この法律において「特定工場」とは、製造業その他の政令で定める業種に属する事業の用に供する工場のうち、次に掲げるものをいう。

二 汚水又は廃液(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項各号の要件のいずれかを備える汚水又は廃液をいう。第三条第一項第二号イ及びロにおいて同じ。)を排出する施設で政令で定めるもの(以下「汚水等排出施設」という。)が設置されている工場のうち、政令で定めるもの

e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346AC0000000107

つまり、特定工場とは、以下の要件を満たす工場のことです。

・製造業などの業種に該当
・「
汚水等排出施設」が設置された工場のうち、政令で定めたもの

したがって、水濁法の対象(特定事業場)であっても、必ず「特定工場」に該当するわけではないんですね。

特定工場に該当するかの判断方法

水濁法の特定事業場のうち、公害防止管理者の整備が必要な特定工場に該当するかは、以下のステップのとおり判断すればOKです。

ステップ1 業種は何か?
ステップ2 特定施設が「汚水等排出施設」に該当するか?
ステップ3 政令で定める工場に該当するか?

ステップ1 業種は何か?

あなたの工場が属する業種が、以下に当てはまりますか?当てはまらなければ、特定工場にはならないので、公害防止管理者等の整備は不要です。

  • 製造業(物品の加工業を含む。)
  • 電気供給業
  • ガス供給業
  • 熱供給業

ステップ2 特定施設が「汚水等排出施設」に該当するか?

業種が当てはまったら、次は、自社の水濁法の特定施設が「汚水等排出施設」に該当するかどうかです。

前述のとおり、汚水等排出施設は、法第2条第2号、政令第3条に定義されていますが、以下の特定施設に該当すれば「汚水等排出施設」になります。

  • 第二号から第五十九号
  • 第六十一号から第六十三号
  • 第六十三号の三
  • 第六十四号
  • 第六十五号から第六十六号の二
  • 第七十一号の五
  • 第七十一号の六

政令 第三条 汚水等排出施設等 第1項
法第二条第二号の政令で定める施設は、水質汚濁防止法施行令(昭和四十六年政令第百八十八号)別表第一第二号から第五十九号まで、第六十一号から第六十三号まで、第六十三号の三、第六十四号、第六十五号から第六十六号の二まで、第七十一号の五及び第七十一号の六に掲げる施設(同表第六十二号に掲げる施設で鉱山保安法第二条第二項の鉱山に設置されるものを除く。)とする。

e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346M50010d40003_20201228_502M60001f40002

自社の特定施設の番号を届出書を見て確認してみてください。

ステップ3 政令で定める工場に該当するか?

特定施設が汚水等排出施設に該当したら、次は、この施設がどんな工場に設置されているかどうかです。具体的には、以下の工場になります。

政令 第三条 汚水等排出施設等 第2項
一 別表第一に掲げる汚水等排出施設のいずれかが設置されている工場排出水を排出しているもの又は特定地下浸透水を浸透させているもの
二 前号に掲げる工場以外の工場で排出水量(一日当たりの平均的な排出水の量をいう。以下同じ。)が千立方メートル以上のもの

e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346M50010d40003_20201228_502M60001f40002

(1)有害物質を排出するおそれがある施設のある工場

まずは、自社の特定施設が「別表第一」に規定したものか確認してください。

この「別表第一」は政令に規定されており、具体的な特定施設が示されています。内容を見ると、有害物質を使用するような特定施設(※)です。

※ 「別表第一」はこちらをご覧ください(下の方にあります)

この特定施設に該当し、さらに工場排水等を公共用水域に排出していたり、特定地下浸透水を浸透させていたりするような工場であれば特定工場に該当することが確定します。

※ 単に有害物質使用特定施設がある工場という意味ではありません。あくまで「別表第一」に該当する施設です。
※ 水質汚濁防止法施行令「別表第一」とは異なります(ちょっと紛らわしい・・・)。

(2)(1)以外の施設で工場の総排出水量が1000㎥以上の工場

上記の有害物質の排出するおそれのある施設に該当しない場合でも、特定工場に該当する場合があります。

それは「一日当たりの平均的な排出水の量が1000㎥以上ある工場」です。

つまり、少なくとも特定施設が汚水等排出施設に該当し、総排出水量が1000㎥以上あれば、特定工場に該当するわけです。

特定工場の内容によって必要な資格が違う

特定工場には、上記のステップ3のとおり、2パターンの工場があることがわかりました。
前述のとおり、水質関係の資格は第1種から4種までありますが、そのパターンと総排出量によって必要な資格が分かれます。

対象施設総排出量必要な資格
有害物質を排出するおそれがある施設のある工場10,000㎥/日以上水質関係第1種
10,000㎥/日未満水質関係第1種
水質関係第2種
上記以外の工場10,000㎥/日以上水質関係第1種
水質関係第3種
1000㎥以上
10,000㎥/日未満
水質関係第1種
水質関係第2種
水質関係第3種
水質関係第4種

※ 必要な資格は、欄内にある資格のいずれか1つが必要という意味です。

3 必要な場合どうすればいいか?

公害防止管理者が必要な特定工場についておわかりいただけましたか?

では必要な場合、具体的に何をやらなければいけないのか?必要な手続きは以下のとおりです。

公害防止管理者の選任および解任時の届出

まずは公害防止管理者を選任しよう

まず公害防止管理者を選任すべき事由」が発生した日から、60日以内に公害防止管理者を選任しなければなりません。

この「公害防止管理者を選任すべき事由」とは、具体的には以下の場合です。

  • 施設を新設または増設した時
  • (選任していた公害防止管理者が)人事異動や退職、死亡等した時
  • (選任していた公害防止管理者を)解任した時

なお、「施設を新設または増設した時」とは、特定工場になった日であり、通常は、該当する特定施設を設置した日になります(操業開始日や工事開始日ではない)。

公害防止管理者が不在の期間があってはいけません。

公害防止管理者の選任届出を提出する

公害防止管理者を選任したら、30日以内に届出書を提出する必要があります。

提出先は「特定工場の所在地を管轄する都道府県知事」ですが、政令指定都市や中核市などの場合は、市長になります。つまり前者は都道府県庁、後者は市役所です。

※ 参考までに公害防止管理者(代理者)の選任・解任届出書の様式を記載します。

解任したら解任届出を提出

通常、選任と解任はセットになり、解任した旨を選任の届出書内に記入します。

公害防止統括者、公害防止主任管理者、代理者の届出もお忘れなく!

前述のとおり、公害防止管理者の不測の事態に備え、代理者を選任しなければなりません。


また、特定工場の場合、公害防止統括者、公害防止主任管理者が必要になるケースがあり、それぞれ選任、解任の届出が必要なのでお忘れなく。

4 まとめ

公害防止管理者の役割、どんな場合に必要か、また必要な場合何をすればいいか、ご理解いただければ幸いです。以下にまとめます。

まとめ
  • 公害防止管理者になるには国家資格(水質関係)が必要
  • 水質関係は、第1、2、3、4種の4種類の資格がある
  • 公害防止管理者が必要なのは、特定工場に該当する場合
  • 特定工場に該当するかは、業種、特定施設の種類、排出水量で決まる
  • 公害防止管理者を選任または解任したら、届出書が必要
TAROさん
TAROさん

最後までご覧いただきありがとうございました。

【執筆者 プロフィール】
元技術系公務員のフリーライター。大手製造業で開発業務を経て、公務員の技術職へ。水質汚濁防止法の担当者として、年間100件以上の事業場への立入検査や届出の審査などを行う。公害防止管理者(水質第1種)、廃棄物処理施設技術管理者などの資格を保有。現在は、ライターに転向し、ビジネス系のWEBメディアや製造業者のWEBサイトなどの記事を執筆中。

「【記事執筆承ります】環境・リサイクルが専門の元化学系公務員ライター」

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