水質汚濁防止法の有害物質って、一体どんなものなの?該当したら何すればいいのかな?
今回はこんな悩みを解決します。
・有害物質ついて1から理解したい方
・法律や自治体のサイトを見てもよくわからない方
・企業で、新しく水質汚濁防止法の届出担当者になった方
・新しく特定事業場の経営者・工場長になる方
・公害防止管理者を受検する予定の方 など
- 水質汚濁防止法の有害物質とは?
- 有害物質について確認すべきポイント
この記事を読み終わった後は、水質汚濁防止法の有害物質について、理解が深まり、確認すべきポイントがわかるはずです。
なお本記事は、信頼性を保つため、環境省や自治体の情報を参考にしています。
※なお、はじめて水質汚濁防止法の届出担当者になり、全体的に何をやればいいか知りたい方はこの記事をご覧ください。
水質汚濁防止法の有害物質とは?
「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある」28物質
水質汚濁防止法に定義される有害物質とは、法第2条第2項第1号にあるとおり、「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質」のことです。
具体的には、以下の全28物質が定義されています(※令和3年9月18日現在)。
水質汚濁防止法施行令
第二条 法第二条第二項第一号の政令で定める物質は、次に掲げる物質とする。
一 カドミウム及びその化合物
二 シアン化合物
三 有機燐りん化合物(ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名パラチオン)、ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名メチルパラチオン)、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。)
四 鉛及びその化合物
五 六価クロム化合物
六 砒ひ素及びその化合物
七 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物
八 ポリ塩化ビフェニル
九 トリクロロエチレン
十 テトラクロロエチレン
十一 ジクロロメタン
十二 四塩化炭素
十三 一・二―ジクロロエタン
十四 一・一―ジクロロエチレン
十五 一・二―ジクロロエチレン
十六 一・一・一―トリクロロエタン
十七 一・一・二―トリクロロエタン
十八 一・三―ジクロロプロペン
十九 テトラメチルチウラムジスルフイド(別名チウラム)
二十 二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―s―トリアジン(別名シマジン)
二十一 S―四―クロロベンジル=N・N―ジエチルチオカルバマート(別名チオベンカルブ)
二十二 ベンゼン
二十三 セレン及びその化合物
二十四 ほう素及びその化合物
二十五 ふつ素及びその化合物
二十六 アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物
二十七 塩化ビニルモノマー
二十八 一・四―ジオキサン
有害物質とは具体的にどんな物質か?
ざっくり分類すると、3つに分けられます。これらの項目はもともと、環境基本法の環境基準に定められている項目です。
(重金属等)
カドミウム、鉛、六価クロム、水銀、シアン、ヒ素、フッ素、ホウ素、アンモニア及び硝酸化合物等、セレン
(揮発性有機化合物)
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、一・二―ジクロロエタン、一・一―ジクロロエチレン、一・二―ジクロロエチレン、一・一・一―トリクロロエタン、一・一・二―トリクロロエタン、一・三―ジクロロプロペン、ベンゼン、塩化ビニルモノマー、一・四―ジオキサン
(農薬等)
有機りん化合物、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、チウラム、シマジン、チオベンカルブ
※ 土壌汚染対策法の特定有害物質の分類法を参考にしたものです。
各有害物質の用途、環境や人体への影響については、環境省の化学物質ファクトシートをご覧ください。
有害物質について確認すべきポイント
排水基準が一律に適用される
排水基準の有害物質の項目については、すべての特定事業場から出る排出水について、一律に適用されます。
排水基準値は「排水基準を定める省令」別表第1に規定されています。
※ 排水基準全般について知りたい方はこちらの記事をご覧ください
実際の排水処理方法については、かなり専門的になりますが、基本的な仕組みや専門用語、維持管理上のポイントなどは把握しておく必要があります。公害防止管理者の講習用のテキストに記載されていますので、ご参照ください。
新・公害防止の技術と法規 水質編(全3冊セット)(2021) 公害防止管理者等資格認定講習用 [ 公害防止の技術と法規編集委員会 ]

特定施設で「製造・使用・処理」していれば有害物質使用特定施設
該当する有害物質を特定施設で「製造・使用・処理」していた場合、
その特定施設は「有害物質使用特定施設」となります。
有害物質を製品として製造すること
【使用】
有害物質をその施設の目的に沿って,原料,触媒等として使用すること
【処理】
有害物質又は有害物質を含む水を処理することを目的として,有害物質を
分解又は除去すること
ちなみに有害物質使用特定施設に該当するかは、有害物質の濃度は関係ありません。
貯蔵を目的とした施設があれば有害物質貯蔵指定施設
平成24年6月の法改正で新たに追加された施設です。
有害物質を含む廃液など液状のものを貯蔵する目的の施設は、「有害物質貯蔵指定施設」として規制の対象となりました。
これらの施設には届出と構造基準などの義務が課される
上記の有害物質使用特定施設と有害物質貯蔵指定施設がある場合、
設置や変更など各種届出が必要です。
昔は有害物質特定施設であっても、排水も雨水などもすべて公共下水道などに排出している場合(公共用水域に一切排出しない場合)は、水質汚濁防止法の届出は不要でしたが、法改正により、届出が必要になりました。
※特定施設の設置届出について知りたい方はこちらをご覧ください。
また上記の施設には、構造基準が適用されます。
この基準は、有害物質が漏洩し地下水汚染を未然防止するための規制であり、これらの施設に加え、
付帯する配管などの設備や周辺の床面などにも構造基準が課されるものです。
さらに定期点検の義務も課されますので要注意です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?有害物質について、理解を深められたでしょうか?
有害物質を使用等していると、様々な規制が追加されますので対応が必要になります。
これからも環境担当者の方が、スムーズに法令を理解し、実務に活かせるよう記事を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
最後までご覧いただきありがとうございました。
~執筆者 TAROさんについて~
某国立大学院の工学研究科で、プラスチックのリサイクルについて研究。大学院修了後、大手製造業に就職し、液晶テレビや携帯電話などの電子部品の素材を開発する業務に従事。特許取得。その後、転職し、環境や水に関する仕事に従事。公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者。2022年4月からライターとして独立予定。
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