水質汚濁防止法の業務を担うことになったけど、あまり時間をかけずに要点だけ学ぶ方法はないかな
今回はこんな悩みに役立つ「水質汚濁防止法の効果的な学び方」に関する内容です。
もちろん法律は学ぶことより守ることがメインです。しかし、法律を知らなければ守れません。「知らなかった」で済まないのが法律のこわいところです。
本記事では
「最速5時間で水質汚濁防止法の学び方が身に付く方法」
をご紹介します。また、あわせて学びに役立つ本をご紹介します。
これを読むと
・法律への苦手意識が減り、早く正確に読める
・水質汚濁防止法の「押さえどころ」がわかる
・ムダな時間をかけずに、効率的な学び方がわかる
ようになると思います。
もちろんこれだけで、水質汚濁防止法の内容がすべて理解できるものではありません。
ただし、法令担当者として「何をどこまで理解すればいいか」がわかり、確実に法令を守れる知識が身につくはずです。
水質汚濁防止法の効果的学習法5ステップ
具体的には次の5つの手順を踏むことをご提案します。
ステップ1:法令の在処を知る(30分)
ステップ2:自治体の手引きを知る(30分)
ステップ3:法律の読み方を学ぶ(1時間)
ステップ4:環境法令の読み方を学ぶ(1時間)
ステップ5:公害防止管理者テキストを置く(2時間)
一見遠回りに見えるかもしれませんが、私の経験上これが最短です。
各ステップに目安とする所要時間を記載します。なお、すでにご存じの場合は、どんどん先へ進んでください。
①法令の在処を知る【30分】
水質汚濁防止法・政令・省令・通達はどこに?
まずは守るべきルールは何か、どこを見ればいいかを知る必要があります。
水質汚濁防止法には、施行令(政令)、施行規則(省令)、告示、通達などがあります。さらに環境基本法、公害防止管理者法、土壌汚染対策法などの関連法もあります。
これらは国のサイトから閲覧可能です。ブックマークしておき、規制の根拠となる最新の条文をチェックする習慣を身につけることで、法令担当者としての力が身につきます。
以下にリンク先(外部サイト)を掲載します。
ここではまず掲載場所だけ確認しておけば大丈夫です。
不定期にある法改正を見逃さない
法令は不定期で改正されます。法令担当者は、法改正の情報を事前にキャッチしてください。
法改正の施行後に初めて知るようだと、対応が遅れる場合もあるからです。
通常、法改正にあたって、国はさまざまなプロセスを踏みます。
例えば「中央環境審議会水環境・土壌農薬部会」での審議やパブコメなどが事前に行なわれます。また排水基準が変わる場合などは、先行して環境基本法の環境基準が変更される場合もあります。
環境省の報道ページなどチェックし、日頃から動向を把握しておく必要があります。
②自治体の「手引き」を知る【30分】
あなたの事業場を担当する自治体はどこ?
「届出が必要な時、どこに提出すればいいか」把握していますか?
水質汚濁防止法を所管する環境大臣の権限は、各自治体の長に委任されています(政令第10条)。
つまり、直接指導を受けたり、届出を行なったりする所管自治体は、
・都道府県(出先機関)
・政令市(政令指定都市や中核市が多い)
のいずれかになります。
これから長いお付き合いになるので、まずは把握してください。
自治体作成の手引きを知る
各自治体で発行する「水質汚濁防止法の手引き」(名称はさまざま)なるものを探してみてください(ない場合もあります)。
手引きには、
・水質汚濁防止法の概要
・規制内容
・必要な届出と提出先
・条例・要領などの独自規制
などがおそらく掲載されているはずです。
特に「条例や要領による独自の規制がないか?」ということに注目してください。
水質汚濁防止法の場合、
・「横出し規制」
・「上乗せ基準」
といった形で、各自治体独自の規制があるケースもめずらしくありません。
また、政令市などで独自に発行していない場合は、都道府県のものを参考にしてみてください。
さて、ここまでのステップを踏むことで、法令や条例など「守るべきルールと掲載場所」が把握できたと思います。
③法律の読み方を学ぶ【1時間】
いきなり法律を読み解くのはキツイ!
さて、法令担当者である以上、法令の条文(原文)を読まないわけにはいきません。しかし、まったく読んだことがない人が、いきなり読み解こうとするののは、正直、かなり苦労するのではないでしょうか。
「一文が長すぎる」
「独特の言い回しで意味がわかりづらい」
「主語がどこまでかわからない」
「カッコが何重もある」
・・・と、など慣れるまでは大変ですよね(私もそうでした)。また、正しく読み取れず、意味をはき違えてしまっては問題です。
実は、法律には「表記のルール」があり、読み解くためのコツがあるのです。
それをまず学ぶことが、法律への苦手意識が減り、早く正確に読めるようになる近道です。
コツがわかれば法令は楽に読める!
法律を読み解くコツを、最初に習得することが肝心です。実際のところ、法令担当者の方はさまざまな法律も担当されると思うので、最低限の法律のルールを学んでください。
ネットで調べれば情報はありますが、私自身、もっと早くから読んでおけばよかったと思うのが、「元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術」という本です。
例えば
・法律の基本ルール(構造は京都の町に似ている)
・法律用語の公式(「又は」と「若しくは」の違いなど)
・法律の分類(一般法と特別法の違いなど)
・法律の全体像をつかむ図解術
が図解とともにわかりやすく書かれています。
法律本ですが、法制局キャリアの方が書いたものですぐに読めてしまうと思います。
④環境法令の読み方を学ぶ【1時間】
環境法令のクセをつかむ
水質汚濁防止法をはじめとする環境法令は、一見すると複雑な体系をしているように見えますが、いくつかの「クセ」があります。
このクセを知っておくと、どこに注意して読めばいいかわかり、理解度がアップするはずです。
環境法の読み方について詳しく書かれているのが「図解でわかる! 環境法・条例―基本のキ」という本です。
内容としては、
・「規制対象」「義務内容」「担保措置」の3つの視点で読む方法
・義務規定の見極め方がわかる方法
・さまざまな環境法の主要なポイントと図解
が書かれており、まさに環境担当者のための本です。
水質汚濁防止法のほか、省エネ法、フロン排出抑制法、建築物省エネ法、廃棄物処理法、土壌汚染対策法、化審法、環境影響評価法などのポイントが解説されています。
この一冊でかなりの時短になるはずです。
⑤公害防止管理者テキストを備えおく【2時間】
「水質汚濁防止法の教科書」を手元におこう
最後のステップとしては、公害防止管理者のテキストを「手の届く範囲に置く」ということです。
公害防止管理者とは、一定の要件を満たす工場・事業場に必ず配置する義務があり、国家試験に合格した人だけがなれます。
この国家試験は、「新・公害防止の技術と法規 水質編」という公式テキストから出題され、公害防止管理者に必要な情報がすべて網羅されたテキストです。
担当者になった以上、この本を手の届く範囲に常備することをおすすめします。
今後、水質汚濁防止法の実務を行っていくうえで、必ず疑問が生じるはずです。そんな時に「水質汚濁防止法の教科書」ともよべるこの本がすぐ近くにあれば安心です。
理由は主に二つあります。
(理由1)排水処理や水質検査などの技術的内容がある
排水処理や水質検査を外部委託している場合でも、担当者としてベースとなる技術的な理解がなければなりません。
このテキストには「技術編」として、各排水基準項目の排水処理方法や水質検査について詳しく書かれています。
これだけ体系的にまとめられている類書はありません。
(理由2)法令の条文が掲載されて書き込める
水質汚濁防止法、政令、省令に加え、環境基本法、公害防止法など関連法案の条文が掲載されています。
紙面上にあれば、法の解釈や自分なりに気づいたメモを書き留めておけたり、アンダーラインを引けたり、何かと便利です。
本は3冊セットで電話帳ほどの厚みがあり、値段も1万円弱しますが、この値段で法令違反のリスクを下げられると考えたら安いものではないでしょうか。
法令担当者は情報量が勝負です。「教科書」が手元にあると便利です。
特に今すぐ実践した方がいい方
水質汚濁防止法を初めて担当することになった方は、早い段階で法令の理解に集中的に取り組んでください。何か事が起こってからでは遅いです。
特に、以下のいずれかに該当する方は、今すぐ行動に起こした方がいいです。
・水質汚濁防止法に詳しい人が近くにいない
・届出を自力で作成する自信がまだない
・自社工場で排水処理を行っている
・有害物質を扱っている
・さまざまな薬品・化学物質を扱うことがある
まとめ
最後に改めて5つのステップを掲載します。
ステップ1:法令の在処を知る(30分)
ステップ2:自治体の手引きを知る(30分)
ステップ3:法律の読み方を学ぶ(1時間)
ステップ4:環境法令の読み方を学ぶ(1時間)
ステップ5:公害防止管理者テキストを備えておく(2時間)
上記は「必要な情報はどこにあるのか?必要な情報をどう読み解けばいいのか?」を重視して解説しました。
水質汚濁防止法は慣れるまでは大変かもしれませんが、効率的に学習方法のヒントになればうれしい限りです。本来行うべく生産活動に注力できるようがんばってください。
<参考図書>
最後までご覧いただきありがとうございました。