8「廃棄物処理法の廃棄物」とは何か?

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ルールを守ってゴミを処理するためには、「そもそも廃棄物とは何か」ということを理解する必要があります。

「廃棄物処理法の廃棄物」とは、家庭ごみの分別ルールとは異なりますし、ルールも複雑です。

本記事をお読みいただければ、廃棄物処理法の廃棄物が何かわかるようになると思います。

筆者プロフィール

・廃棄物処理法の元行政担当者(元公務員技術職)
・廃棄物処理施設技術管理者の有資格者

法律の定義は?

廃棄物の定義は、法第2条に規定されています。

廃棄物処理法 第二条

この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

廃棄物処理法(e-gov)

どうでしょうか?

正直、条文を読んだだけだと、ちょっとわかりにくいですよね。

「ここに書いてあるものだけが廃棄物なのか?」

・・・と思うかもしれませんが、それは誤りです。

具体的には、廃棄物処理法施行令の第1条から第2条の4に規定されていますが、「廃棄物が出たら、このいずれかに当てはめる」というのが正しい考え方です。

ポイントをわかりやすく解説していきます。

【参考】廃棄物処理法施行令(e-gov)

不要になったら廃棄物

廃棄物の定義については、別途、通知で国の見解が示されています。

廃棄物とは、占有者が自ら、利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になつた物<抜粋>

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について(環境省)

つまり、自分ではもう使わないし、売れるものでもない、売るつもりもない不要になったものは廃棄物と考えます。

廃棄物の種類は?

ポイントは、発生した廃棄物が、廃棄物処理法上の「何の廃棄物」に該当するか、ということです。

廃棄物処理法上、廃棄物は4種類あります。

・産業廃棄物
・一般廃棄物
・特別管理一般廃棄物
・特別管理産業廃棄物


それぞれ略して、
・産廃(サンパイ)
・一廃(イッパイ)
・特管一廃(トッカンイッパイ)
・特管産廃(トッカンサンパイ)

と呼ばれることもあります。

それぞれの廃棄物には、さらに細かい分類があるということを、ここでは覚えておいてください。

各々記事にまとめましたので、詳細はそちらをどうぞ(※執筆中)。

まったく同じゴミでも種類が違う?

それぞれの廃棄物の分類方法を見てみると、基本的には「どんなモノか?」、素材や性状などによって分類されているのがわかります。

しかし、それだけではないところがとても厄介なところ。

実はまったく同じ素材や性状のゴミでも、「誰が出したか?」「どこから出たか?」で、分類の仕方が変わってきてしまうのです。

いくつか事例を紹介します。

(例)
〇プラスチック製品のゴミ
・家庭⇒一廃
・会社⇒産廃

〇野菜などの生ごみ
・家庭⇒一廃
・スーパーやコンビニ⇒一廃
・食料品の製造工場⇒産廃

〇不要になったガソリン
・家庭⇒一廃
・会社⇒特管産廃

〇血の付いたガーゼ
・家庭⇒一廃
・病院⇒特管一廃(※)

※正確には、形状、排出場所、感染症の種類から判断されます。【参考】大阪府医療廃棄物のQ&A

ここでの事例は、ケースによっては別の分類になることもありますので、実際の運用にあたっては、必ず各自治体へお問い合わせください。

該当する廃棄物を処理できる許可があるか?

廃棄物の処理を委託する場合、「処理したい廃棄物の許可」がある廃棄物処理業者に委託しなければなりません。

この許可とは、廃棄物処理業(収集運搬業、中間処理・最終処分)の許可のことで、各自治体が交付するものです。

産廃、一廃、特管一廃、特管産廃それぞれ別の許可が必要です。

また具体的な許可の内容は、廃棄物処理業者が許可申請時に申請した内容によりさまざまで、処理可能な廃棄物の種類が指定されています。

例えば、産廃の中間処理の処分業の許可を有している廃棄物処理業者に処理を委託する場合、あらかじめ許可されている廃棄物の種類(廃プラ、金属くずなど)のみ、委託することが可能です。

委託する場合は、処理業者の許可証を必ず確認してください。

廃棄物ではないもの

例外として規定

廃棄物処理法では、廃棄物に該当しないものとして規定されているものが、いくつかあります。

・気体状のもの
・放射性物質
・河川等の浚渫で生じた土砂
・漁業で漁網にかかった水産動植物等
・土地造成の目的となる土砂

これは基本的なものです。詳細は通知を見てください。

他にも、廃棄物について規定された条文に「~除く」とあればそれも例外です。

有害使用済機器

廃棄物とは別のものとして、法第17条の2に定義された有価物です。

具体的には、使用済みのテレビやエアコンなど家電製品を含む電子機器のことで、中に含まれる銅線や貴金属類などの素材としての価値を有するものに対して、保管や処分について規制するものです。

よく空き地でテレビなどの不用品回収をうたっているような業者を見かけますが、これらを規制するためのものです。

廃棄物の該当性判断

世の中にはさまざまな廃棄物が存在しますが、例外を除き、必ず廃棄物処理法上の廃棄物のどれかには該当します。

ただ「廃棄物か?廃棄物ではない(有価物)か?」の判断は、なかなか厄介で、よく議論されます。

環境省では「総合判断説」という考え方を示しており、廃棄物か有価物かの判断は、占有者の意思、性状などを総合的に勘案すべきものとされています。

例えば、明らかに廃棄物であるものを、1円で売ったから有価物だと言い張る人がいたとしても、売れた売れないだけの視点ではなく、性状など他の視点も含めて総合的に判断しなければなりません。

脱法行為につながる不適正処理は許されませんからね。

ただこの議論は、廃棄物か有価物かグレーゾーンにあるものがほとんどです。

廃棄物を廃棄物として適正に処理すれば、こういった議論は起こらないと思います。

もし判断に迷うことがあれば、総合判断説の視点で考えたうえで、必ず自治体の判断に委ねてください。

【参考】行政処分の指針について(通知)(環境省)p3-5

まとめ

・廃棄物処理法の廃棄物の規定は、ややこしいので、しっかりと理解しておく必要がある。
・廃棄物処理法第2条に定義。具体的には、施行令に規定
・簡単にいえば、不要になった時点で廃棄物
・廃棄物は、産廃、一廃、特管一廃、特管産廃の4種類あり、各々さらに細かい分類がある
・廃棄物の分類は「どんな素材か?」「誰が出したか?」が関係する。
・廃棄物の該当性は総合判断説に基づき判断する。

【執筆者 プロフィール】
元技術系公務員のフリーライター。大手製造業で開発業務を経て、公務員の技術職へ。水質汚濁防止法や廃棄物処理法の担当者として、多くの事業場に立入検査や届出審査を行ってきた。公害防止管理者(水質第1種)、廃棄物処理施設技術管理者などの資格を保有。現在は、ライターに転向し、ビジネス系のWEBメディアや製造業者のWEBサイトなどの記事を執筆中。

元行政職員。主に環境行政を担当し、環境法令に基づく届出や許認可の審査、また年間100社以上の工場や事業場への立入検査をしてきた実務経験があります。公害防止管理者などの国家資格有り。環境法令について、実務を担う方などがわかりやすく学べるようやさしく解説しています。

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