
水質汚濁防止法や公害防止管理者について勉強するために、
おススメの本はありますか?

はい。私がおススメする本をご紹介します
公害防止管理者試験の公式テキストである「新・公害防止の技術と法規」。実は、水質汚濁防止法の理解を深めるためにもとても役立つ本です。自治体で水質汚濁防止法の担当をしていた私の経験を踏まえ、他のおすすめの本とあわせてご紹介いたします。
・水質汚濁防止法の行政担当者(元公務員技術職)
・公害防止管理者(水質第1種)の有資格者
公害防止管理者の本がおすすめ
水質汚濁防止法の理解を深めるには、法律や関連通知、各自治体の手引きなどを読むことが基本です。しかし、「取っ掛かりにくい!」というのが本音ではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが「公害防止管理者」の本です。
公害防止管理者とは、水質汚濁防止法などの規制対象となる特定工場に設置義務があり、試験に合格しなければならない国家資格です。
公害防止管理者の試験には、水質汚濁防止法の知識や排水処理に関する問題が出題されます。したがって、公害防止管理者の本が、水質汚濁防止法の理解を深めるのにとても役立つのです。
※ちなみに「逐条解説水質汚濁防止法」という法律の条文一つひとつの解釈が掲載されている本があります。私も日常的に活用していましたが、多くの自治体が行政判断の際に活用する本です。しかし、1996年発売以来、更新されておらず、現在、入手困難な本となっています。
「新・公害防止の技術と法規 水質編」
私が一番おすすめするのがこちらの本です。一般社団法人産業環境管理協会が作成する「公害防止管理者等資格認定講習用のテキスト」であり、公式のテキストです。試験問題はこのテキストから出題されます。
この本を読むメリットはたくさんあります。
・法律、施行令、施行規則の条文が掲載されて見比べやすく、書込みも可
・法の解説があり、要点がわかる。条文を見返す際に、ポイントがわかりやすくなる
・pHやBODなど排水基準項目がどんなものか理解できる
・排水処理の方法や水質検査など、技術的なことも詳しく解説されている
・環境基本法や関連方法、法の背景など幅広く理解できる
・一度しっかり学べば、自分の武器となり、キャリアップにつながる
全3冊セットであり、内容は
1.公害総論 2.水質概論 3.技術編(汚水処理特論、水質有害物質特論、大規模水質特論)
となっています。
目次
新・公害防止の技術と法規 (水質編) 2022年版
I 公害総論
I. 1 環境問題の概要
I. 2 環境基本法と環境関連法
I. 3 環境基本法の解説
I. 4 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の解説
I. 5 最近の環境問題
I. 6 各種環境管理手法に関すること
I. 7 国際協力
II 水質概論
II . 1 水質汚濁防止対策のための法規制の仕組み
II . 2 水質汚濁防止法の解説
II . 3 水質汚濁の現状
II . 4 水質汚濁と発生源
II . 5 水質汚濁機構
II . 6 水質汚濁の影響
II . 7 国又は地方公共団体の水質汚濁防止対策
III 汚水処理特論
III. 1 汚水等処理計画
III. 2 物理化学処理法
III. 3 生物処理法
III. 4 汚水等処理装置の維持管理
III. 5 水質汚濁物質の測定技術
IV 水質有害物質特論
IV. 1 有害物質処理技術の概要
IV. 2 カドミウム・鉛排水の処理
IV. 3 クロムVI(六価クロム)排水の処理
IV. 4 水銀排水の処理
IV. 5 ひ素排水の処理
IV. 6 セレン排水の処理
IV. 7 ほう素排水の処理
IV. 8 ふっ素排水の処理
IV. 9 シアン排水の処理
IV.10 アンモニア・亜硝酸・硝酸排水の処理
IV.11 有機りん(農薬)排水の処理
IV.12 農薬系有機化合物排水の処理
IV.13 ポリ塩化ビフェニル(PCB)排水の処理
IV.14 有機塩素系化合物排水の処理
IV.15 ベンゼン排水の処理
IV.16 1,4-ジオキサン排水の処理
IV.17 水質有害物質処理装置
IV.18 有害物質測定技術
V 大規模水質特論
V. 1 大規模排水の拡散と水質予測
V. 2 処理水の再利用
V. 3 大規模設備の水質汚濁防止対策の事例
値段は一万円程度しますが、公害防止管理者の受験用としてだけでなく、地方公共団体,会社における研修用,大学の教材用にも広く使われています。
「そこまで必要?」と思うかもしれませんが、法律の怖いところは「知らなかった」ではすまないこと。規制が複雑で、罰則もあり、絶対に水質事故を起こさないためにも、水質汚濁防止法の深い理解が必要ではないでしょうか。

毎年1,2月ごろ新刊が発売されています。内容は大きく変わらないと思いますが、法改正などあるため、最新版があるといいですね。
(参考)産業環境管理協会
こちらの本もおすすめ
「公害防止管理者 水質関係 超速マスター」
公害防止管理者の試験用の問題集となりますが、解説がわかりやすいと好評なものです。問題集のいいところは、ポイントが見えやすくて勉強しやすいところです。本著は図表も豊富であり、要領よく学べます。
「図解でわかる! 環境法・条例―基本のキ」
こちらは環境法全般に関する本です。特徴的なのは、環境法や環境条例を「どう読めばいいか」のコツが書かれているところです。私自身も参考にしています。もちろん、水質汚濁防止法の全体像やポイントがわかりやすく解説されており、一読の価値アリです。
「元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術」
もし法律をあまり読んだことがないという方は、早い段階でこちらを読んでおくといいです。私自身技術系で法律は不慣れでしたが、この本を読んで法律の基本を身につけることができました。最初から読んでいれば、水質汚濁防止法をもっと効率的に素早く理解できたのかなと思っています。
技術者にとって法律は馴染みのないものかと思います。良書を活用しながら、効率よく、正確に学習していき、法の適切な運用に努めていただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
【執筆者 プロフィール】
元技術系公務員のフリーライター。大手製造業で開発業務を経て、公務員の技術職へ。水質汚濁防止法の担当者として、年間100件以上の事業場への立入検査や届出の審査などを行う。公害防止管理者(水質第1種)、廃棄物処理施設技術管理者などの資格を保有。現在は、ライターに転向し、ビジネス系のWEBメディアや製造業者のWEBサイトなどの記事を執筆中。
「【記事執筆承ります】環境・リサイクルが専門の元化学系公務員ライター」